高知県政を揺るがした一大スキャンダル「高知県庁の闇融資事件」をご存じでしょうか?
高知県の元副知事も関わった不正融資事件として、全国的にも有名となった事件ですが、この事件が発覚したのは、高知新聞の記者であった依光隆明さんが指揮する特別取材チームのスクープがあったからです。
そんな高知新聞のエース記者だった依光記者について紹介します。
依光隆明さんの経歴
依光隆明さんは、日本のジャーナリスト。元高知新聞社会部長。元朝日新聞社特別報道部長を歴任。
1957年高知市生まれ。1981年に高知新聞に入社する。
2001年高知県庁の不正融資を暴く「県闇融資」取材班代表として日本新聞協会賞を受賞。
高知新聞社、東京支社編集部長、社会部長、編集局次長兼編集委員を経て、2008年朝日新聞に移籍する。
朝日新聞社水戸総支局長、特別報道部長、朝日新聞諏訪支局長を歴任。
2012年福島第一原発事故に焦点を当てた連載企画「プロメテウスの罠」の取材班代表で再び日本新聞協会賞を受賞(2回目!)
朝日新聞を退職後、現在、フリーの記者として活動中。
一地方新聞である高知新聞の記者が、全国紙である朝日新聞にヘッドハンティングされるのは異例です。
そんなエース級の取材力を持った記者が、高知新聞にいたというのは、驚きですよね。
依光隆明さんがスクープした高知県庁「闇融資」事件とは?
依光隆明さんの名前を有名にしたのは、なんといっても、2001年にスクープした高知県副知事も関わった不正融資「闇融資」事件ですね。
【高知県の闇融資事件(モード・アバンセ事件)とは?】
高知県南国市にある縫製業協業組合「モード・アバンセ」に対して、高知県が約14億4千万円を無利子融資(闇融資)を行っていたことが、高知新聞の調査報道で発覚。高知県議会百条委員会の告発を受けた県警は捜査に乗り出し、01年2月にモード社幹部を詐欺容疑で逮捕したのを手始めに、同年5月、山本卓元副知事、元商工労働部長ら県幹部5人を背任容疑で逮捕。元副知事を懲役2年2カ月、元商工労働部長を1年8カ月の実刑とし、07年8月28日、最高裁で確定した。
参考リンク:モード・アバンセ事件
高知県のナンバー2である副知事が逮捕されたことで、全国的にも話題となりました。
依光隆明さんは、この闇融資事件の取材班を指揮してスクープしたことで、日本新聞協会賞を受賞しました。
なお、この事件の顛末は、書籍化されているので興味がある方は一読ください。
高知新聞が日本新聞協会賞を受賞した「白いダイヤ」も必読です。
【要約・感想】高知新聞「追跡・白いダイヤ」がヤバすぎる!高知県のウナギ業界の闇を暴露する衝撃の一冊
大丈夫かよ、高知新聞・・・ 高知新聞のノンフィクションは、高知県政を揺るがした「モード・アバンセ」事件を深く切り込んだルポルタージュ「黒い陽炎」が有名ですが、今回紹介する「追跡・白いダイ ...
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「プロメテウスの罠」で2度目の日本新聞協会賞を受賞
朝日新聞にヘッドハンティングされたあとも、取材意欲は衰えず、2012年福島第一原発事故に焦点を当てた連載企画「プロメテウスの罠」の取材班代表で再び日本新聞協会賞を受賞しています。
プロメテウスの罠は全9巻という大作ですが、政府、官僚、東京電力、そして住民を丁寧に追ったルポルタージュです。
吉田調書問題で朝日新聞の上層部に抗議して左遷された?
朝日新聞政治部次長(デスク)だった、鮫島浩さんが言及していますが、福島第一原発の吉田所長の聴取の記録(吉田調書)の問題において、依光さんは、現場の記者として、上層部に対して抗議をしていたようですが、結果的に地方局に異動することになります。
元政治記者が告発した朝日新聞社の内情 鮫島 浩[ジャーナリスト]
あの後社員集会とかがよく開かれて、現場から突き上げもあったと言われます。
鮫島 ありました。私はもちろん出てないですけれど、報告は全部メモとかで見ました。『プロメテウスの罠』で知られる依光隆明さんをはじめ特別報道部の有志何人かはすごい頑張ってくれたんです。
あの時、体を張ってくれた依光さんはじめ、特報部の仲間たちには本当に感謝してます。でも、そうやってくれた人たちの多くは、その後会社員としては不遇な人生ですよね。飛ばされたり、辞めちゃったり……。たて突いた人々をことごとく人事で左遷したり、外していったりするという、会社は露骨な弾圧をしたということです。
ヘッドハンティングされ、プロメテウスの罠で日本新聞協会賞を受賞した記者なのに、地方に異動となるのは、少し残念ですね。
【朝日新聞の諏訪支局長時代】長野県のメガソーラー問題に言及
諏訪支局長に異動した後は、FIT(固定価格買い取り制度)によって急増した、長野県のメガソーラーについて、消費者が高い電気料金を負担する一方で、東京や外国資本が、地方の土地山林を買収している現状を紹介しています。
当時の記事は、以下のリンクから見ることができます。
Opinion|2021/01/10|依光隆明(朝日新聞諏訪支局)
依光隆明さんの現在(朝日新聞退社後)
依光隆明さんは、朝日新聞でも記者として取材活動を続けていましたが、現在は退職してフリーの記者となっています。
そして、最近高知新聞において、ごっくん馬路村の立役者である東谷さんに関する特集記事を担当しています。
人生は引き算だ―村を作りかえたごっくん男 馬路村農協前組合長 東谷望史物語(1)
東谷望史さんは組合長まで務め、この3月に農協を引退しました。激務から解放された東谷さんに、これから週1度の割で人生を振り返ってもらいます。聞き取るのは私、依光隆明です。14年前まで高知新聞にいて、東谷さんが「ごっくん」を生み出す少し前には馬路村を取材エリアとする中芸支局長を務めていました。朝日新聞を経て、現在はフリーの記者です。
【まとめ】依光隆明さんがさらに高知県の暗部をスクープするかも?
朝日新聞を退社して、高知新聞で特集記事を書くということは、今後、高知県でも取材活動を再開していくかもしれません。
もしも、依光さんが高知県の取材活動を再開すれば、闇融資事件レベルの大きなスクープを、再び発掘する可能性もあります。
今後も、依光さんの記事には注目しないといけませんね!