高知県は、47都道府県で唯一、東横インが無い県である。
「日本中どこでもある東横インが無いなんてありえない!」と思う人もいるだろうが事実だ。
高知県はご存じの通り、マーケットとしては縮小傾向であり、高知県庁がいくら観光業に注力していても、東横インはないのである。
ところが、2022年秋、事態が急変した。
なんと、東横インが高知県高知市に進出する可能性が出てきたのである。
しかし、東横イン高知がオープンするハードルも存在している。そこで、今回は東横インが高知に進出する可能性について解説したいと思う。
最後に、実は東横インが過去に高知に進出計画があった歴史も振り返っておきたい。
47都道府県で唯一、高知県に東横インが無い
東横インは、2022年3月期決算では486億8,700万円を誇る、日本を代表するビジネスホテルチェーンである。
国内外で298店舗を誇り、客室数はアパホテルグループを超えて日本トップクラスを誇る、まさに日本を代表するビジネスホテル業界の雄である。
しかし、そんなビジネスホテル界のトップ・オブ・トップである東横インでも参入していない県、それが高知県なのである。
高知県に東横インがないのは、半ばネタにされている。
ルートイン・アパホテル・東横インが全てピンポイントで高知県にないの、今知った。 pic.twitter.com/ZxeZJRFvSG
— とさか (@tosaka_public) July 10, 2022
余談だが、業界大手のアパホテル、ルートインも同様に高知県には存在しない。
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しかし、高知県に東横インが来る可能性が浮上したのである。
しかも、東横インが高知に進出する予定地は、高知市の中心部にある「オーテピア高知図書館」と「ひろめ市場」近くという好立地なのである。
東横インが高知県にできる場所は?どんなホテルになる?
東横インが高知県の建設される予定地はどこ?
東横インが高知市に進出する予定地は、高知市の中心部にある複合施設「オーテピア高知図書館」の西側にある高知市の市有地「西敷地」である。
所在地 | 高知市追手筋二丁目9番6,9番7 |
貸付面積(事業用地の敷地面積) | 2,551.56 ㎡(予定※) |
容 積 率 | 500% |
建 ぺ い 率 | 80% |
※:貸付料算定に当たっては,西敷地全体の区域面積からセンダイヤザクラ管理地(12.5 ㎡)を除く貸付面積を使用する。
西敷地は、現在空き地となっているので有効活用を図るため、高知市は民間に貸し出しをしたいと考えて、公募をしたところ、名乗りあげたのが東横インなのである。
なお、公募には4社が名乗りを上げたものの、3社が辞退し、結果的に残ったのが東横インとなった。
ついに高知市西敷地の利活用に動きがあった。名乗りを挙げたのは、ビジネスホテルの東横インの一社のみ。高知市商工振興課のホームページでも提案概要書を閲覧できるとのこと。4社中3社が辞退してるというほど、何かと話題の西敷地。どうなることやら。 pic.twitter.com/VJwyVzurEg
— コウチノミクス【高知の暮らしとお金に役立つ経済メディア】 (@poikatuo2) October 24, 2022
東横インが高知に進出したらど何階建てのホテル?設備は?
仮に東横インが高知市の西敷地にホテルを建設した場合は、12階建ての229室の客室を持つ宿泊特化型ホテル(ホテル内にレストランや宴会場がない)となる予定である。
1階と2階に、無料の子育て世代の安全・安心な遊び場やイートインスペースとして提供する。2階には情報発信の場となるギャラリースペースといった市民公共サービス機能がある。
また、敷地内には市民に広く開放する「よさこい広場」を設け、トイレ用マンホールや防災用かまどを設置する災害時の利用もできる機能を持っている。
詳細については、東横インが高知市に提案した提案概要書を公開しているので、興味がある人は確認してほしい。
つまり、高知県に東横インが進出した場合、私たちが思っているザ・ビジネスホテル「東横イン」ではなく、地域に配慮した公共的なビジネスホテルとなるのだ。
東横インが高知した場合の開業時期はいつ?
東横イン高知の開業時期について、高知市の募集要項によれば、事業用地(西敷地)の引き渡しは、令和5年4月ごろとなっており、引き渡しから2年以内に供用開始となっている。
つまり、このスケジュールが予定通りであれば、令和7年4月に東横イン高知がオープンされる予定となるのだ。
もちろん、予定がずれ込む場合はありえるので、確定的にはいえないが、開業時期が遅れるほど、東横インとしては赤字となるので、西敷地の賃貸借契約が締結されたら速やかに着工して、オープンに向けて走り出すだろう。
東横インは、設計・建設・運営を一体的にグループ会社で行うことに特徴があり、スピーディーな建設が期待できる。
なお、東横インに高知が進出した場合の、総投資額は21億円である。
東横インが高知に進出した場合の名称は?
東横インの名称の特徴は、やはり「駅前」という言葉が入っていることだ。
実際、東横インの一覧をみたらわかるように、沖縄県石垣島といった駅がない場所は例外として、なんとか「駅前」というワードは必須のようだ。
とはいえ、東横インが建設予定の場所の近くには、駅は存在しない。
このため考えられる名称は、
「東横INN高知」
「東横INN高知追手筋」
ではないかと思う。
おそらく、東横INN高知西敷地は使わないと思う・・・。
東横インが高知に進出するハードル3つ
何も問題がなければ、高知に東横インが進出する。
しかし、現時点ではスムーズに東横インが高知に進出できるか不透明である。
実は、東横インが高知に進出するためには、超えないといけないハードルが3つあるのだ。
具体的には以下の3つである。
・毎年1400万円の賃借料負担(しかも最低20年間)
・公益に配慮した厳しすぎる選定基準
・東横インが西敷地を利用するためには高知市議会の承認が必要
それでは、順に説明する。
毎年1400万円の賃借料負担(しかも最低20年間)
仮に東横インが西敷地に進出した場合、高知市に西敷地の利用料として年間1400万円を払わないといけないのである。
それも、最低でも20年間以上は、東横インは高知市に土地利用料を毎年1400万円を払い続けないといけないのである。20年総額で2億8000万円である。
この土地利用料は、東横イン高知が仮に赤字であっても、払わないといけない固定費である。
東横インの強みは、なんといっても低価格サービスである。
価格競争力が圧倒的に強く、その力の源泉は、徹底したコストカットである。宿泊に関係ないレストランをコストとして削るぐらい徹底している。
そんな極限までコストカットをする東横インが、毎年1400万円の土地利用料を払いつつ、1階・2階部分については、無料で公共スペースとして提供するのである。
東横インは土地だけでなく建物といったハードを所有せず、ホテルの設計・施工・運営・維持管理といったソフトに専念した経営スタイルであるが、今回は東横インは土地は借り入れるものの、建物については東横インの所有となる。
そして、仮に東横インが高知から撤退する場合は、原状回復義務も課せられている。
つまり、今回の東横インの高知進出は、これまでの東横インの徹底したコストカットという路線とは明確に異なっている。
東横インの経営スタイルには、東横イン創業者である西田憲正氏の本も参考になります。
公益に配慮した厳しすぎる選定基準
東横インが進出を考えている場所は、高知市の公有地であることから、手続きが面倒くさい。
高知市と土地賃貸借契約を締結するためには、まずは高知市が実施するプロポーザル審査会を突破しないといけない。
このプロポーザルの選定基準は公開されているが必須機能として、
1)広場機能
2)家族機能
6)周辺商店街への配慮及び地元の各種団体と連携した取組の実施
7)周辺環境及びオーテピアと一体となった新たな地域の顔となる景観創出への配慮
の4つが求められている。
これらの必須機能は、はっきりいって営利企業からすればコストでしかない。
広場機能、家族機能など、ビジネスホテルの本来の役割を考えると無くても良いものだし、周辺商店街と地元団体は完全に地元対策である。
とはいえ、西敷地は高知市の一等地であるため魅力はあるのも確かである。
しかし、仮に審査会のお眼鏡にかなう提案をしたとしても、次に待っているのは最大の壁「高知市議会」である。
東横インが西敷地を利用するためには高知市議会の承認が必要
西敷地とは、もともと追手前小学校があった場所で、閉校後、オーテピア高知図書館が建設されて西側に余った土地である。
この西敷地を広場にしよう!西敷地にホテル進出は反対!という人々が存在しているのも事実である。
高知市議会は、西敷地にホテル反対の立場が一定の勢力があるというのが特徴である。
このため、西敷地にホテル進出に賛成派と反対派がどちらも存在しており、このような政治状況のため、西敷地の選定について、一旦白紙化した過去もある。
このような白紙化した過去があるので、透明性を高めて、市民の声を反映させた条件とさせた結果、前述したような厳しい選定基準となったわけだ。
とはいえ、まだまだ議会の議決でどうなるかわからない。
そんな政治的にもいろいろとある西敷地なので、個人的には東横インが手を挙げたのは、素直に凄い。
しかし、歴史をひもを解けば、東横インと高知には浅からぬ因縁があったのだ。
「あの事件」がなければ東横インは高知に進出していた!
最後に、東横イン高知県進出が遅れた理由を考えてみたい。
思い出したのが、過去に東横インが高知県進出が決まっていたというニュースである。
現在の「西鉄イン高知はりまや橋」がある場所には、かつて「国際ホテル高知」というホテルが存在していたが、経営悪化により2004年10月に廃業した。
この国際ホテル高知の跡地に東横インが進出するというものだ。
実際、東横インが国際ホテル高知の跡地に進出するという当時の記事が多く存在する。
はりまや橋という高知一の交差点にありながら、いまははす向かいの国際ホテル跡(東横インが入ることになった)と共に絶望的な地方都市の現状を指し示す廃墟としてその姿をさらしている。
ビジネスホテルと言えば、高知県には東横インが無い。以前、国際ホテルの跡地に東横インが出来ることになっていたが、例の事件報道で中止となった。
出典:旧高知西武ビル解体終了
交差点をはさんだ西武跡地のはす向かいにも、一昨年10月末に閉館した国際ホテル高知の跡地が更地状態となっている。
当初、東横インが入る予定だったが、例の偽装工事事件で話は白紙に。
出典:国際ホテル跡地
はりまや橋の横にあった国際ホテルが倒産し、
跡地には東横インが入居予定でしたが
例の事件でぽしゃったため、空地のままになっていました。その跡地に来年、西鉄インが入居することに決まったそうです。
例の事件というと、過去に東横インが起こした2006年の不法改造問題である。
具体的には、建築基準法に違反するような、身体障害者用の客室や駐車スペースを一般客室や倉庫などに改造したり、点字ブロックや車椅子マークを撤去するといった違法行為が明らかになった事件である。
この事件で、東横インのブランドは大きく傷つき、国際ホテル高知の所有者であった「ニューコウチビル」が東横インの進出に関する合意書を白紙にしたのだ。
なので、この東横インの不法改造問題がなければ、高知県にも東横インがすでに進出していた。(もちろん、この場合は西鉄インは高知に存在していなかった)
それが時を超えて、2022年の現在、西敷地を舞台に再び、東横インが高知に挑戦するというのは、なんとも数奇なものである。
【まとめ】東横インが高知に進出するかどうかは令和5年の3月に決まる
東横インが高知に来るかどうかは、まだまだ不透明であり、超えないといけないハードルは多い。
仮に東横インがプロポーザル審査会と、高知市議会の承認をしても、おそらく反対派は抵抗運動をする可能性もある。
念願の東横インの高知進出か?それとも、引き続き西敷地は広場として利用されるのか?今後の西敷地の動向に注目したい。
以上、高知県に東横インが進出する可能性について解説しました。